市場のの人波を掻き分ける 大勢の母親達がため息を付いている
ニュースがたった今もたらされた 我々には後 叫喚の5年だけが残されていると
新聞売りが泣きながら 地球は本当に終わりなのだと言っている
嘆きのために濡れた彼の頬で 僕は彼が嘘を言っていないと知ったんだ
僕の耳に聴こえてくる 電話のベル オペラハウス 大好きなメロディ
僕の目に映る 少年 玩具 アイロンとテレビ
僕の脳は余地のない倉庫のように痛み出す
沢山詰め込まなくてはならなかったんだ 何もかもを貯め込むために
全ての太った人や痩せた人々 全ての背の高い或いは低い人々
全ての名もない人々 名のある人々も
僕はこんなに多くの人々を必要だなんて思ったこともなかった
僕と同じ年頃の少女が気がふれて幼い子供達を叩いていた
もし黒人が引き離さなければ殺してしまっていただろう
腕を負傷した兵士がキャデラックの車輪を見つめていた
警官が司祭に額ずいてその足に口づける
それを見て嘔吐する同性愛者
 僕は思う 僕は君をアイスクリームパーラーの中に見つけた
 ゆっくりと冷たいミルクシェイクを飲んでいる
 微笑んで 手をふって とても素敵に見える
 君がこんな歌の中に自分が存在してると知ってたなんて思えない
寒くて 雨が降っていて 僕はまるで俳優みたい
母親を思いだし 還りたくなった
あなたの顔 その家系 その話し方
あなたにキスする あなたは美しい あなたと歩きたい

我々には5年間しかないのだ この目に焼き付いている
5年間           何という驚愕
5年間           頭がとても痛い
5年間           それだけが全て


five years david bowie
album ziggy stardust 1972

大意 協力 Mi.Y.

「後5年」 

人が生きてゆく命には、限りがある。
それは実にありふれた事実だ。
だが、それを、デモクレスの剣のように私の眼前に
顕現させた最初の歌こそ、ziggystardustの一曲目
5年間だった。

だが不可思議なことに私がこの不吉な詩から受けたものは
自分の日常の中に如何に重要な事柄がだまし絵の如く存在するかということと
そして、アイスクリームパーラーで何者からも切り離されたかのように
美しく存在する一人の他者の印象だった。

生涯の中で私の魂の中にこのアイスクリームパーラーで手を振る様な存在を
得ること。それは、この歌をはじめて聴いたときには思いもよらず
だが、無意識に渇望していたことであったように思える。

私の人生はこの時代から遅い黎明を迎え始めた。
それは、紛れもなくDAVID BOWIEがもたらした夜明けであった。